アーユルヴェーダの近年の動向

アーユルヴェーダは最も効果的でホリスティックな治療体系と広く考えられており、その発祥は約3000年から5000年前のインドにさかのぼります。アーユルヴェーダは史上唯一の、完成した治療の科学であり、世界最古の医療体系であるとされています。「アーユルヴェーダ」という言葉は実はサンスクリット語で「人生の科学」を意味し、人々に自然環境と調和した生活を送ることを伝え、不調を防ぎ、心とからだと周りにある自然との調和の中に生きる手助けをします。アーユルヴェーダは主にひとの体の病気を防ぐことを目指していますが、かりに病気でない場合でも、幅広い種類の自然治癒法によって、体を自然の力でいやすことができます。

アーユルヴェーダの存在は、神から人類にさずけられたものであるとされ、数えきれないほどの人を助けてきており、今でもなお、施術は成功をおさめています。アーユルヴェーダの概念が最初に唱えられたのはインドの古代文書で、当時から、著名な賢人や、チャラカ、スシュルター、ヴァグバータなどの作家によって改良、洗練されてきました。このような研究者や学者による研究や著作が、医学療法を文字に起こし、記録する重要な手段だったのです。

アーユルヴェーダの成長と発展は、インドの地での政治的な歴史に結びつけられます。アーユルヴェーダは13〜14世紀にその繁栄をきわめましたが、アーユルヴェーダのような医学療法であるシッダ(南インドのある部族で利用される医学療法)や、ウナニ(中東や南アジアの国々の伝統的な医学で、インドへは貿易商人によって伝えられた)の衰退は、300年にわたる英国植民地時代において深刻な問題になっていました。この衰退は、英国統治時代に、ホメオパシー医学とは対称にあるアロパシー医学がインドに伝えられたことが主な理由とされています。この時代、アーユルヴェーダは窮地に立たされていたのです。しかし、1947年のインド独立後、伝統的な医学が再興し始めました。1980年ごろから、西洋人によってアーユルヴェーダの持つ可能性が認識され始めてからは、国際的に受け入れられるようになりました。アーユルヴェーダで用いられる薬は、ハーブや果物、スパイス、または野菜の抽出物から作られているため環境にやさしいこと、そして全く副作用が無いことがその要因でした。

ここ数年、近代のアーユルヴェーダの専門家によって、従来とは異なる配合や新しいハーブを使うことで伝統的な薬の改良品が作られてきました。インドの南部にあるケララ州ではさらに独自の伝統が付け加えられ、その優れた治療法を「ケララ・アーユルヴェーダ」としてブランド化してきました。

ケララでのアーユルヴェーダの効果を促進させる要因として、気候条件が挙げられます。ケララの温暖で湿潤な空気は、特にモンスーンの時期に顕著になりますが、毛穴を開き、マッサージの際に薬用オイルの吸収を促進させます。またケララでは、アーユルヴェーダが外的干渉や、妨げなしに継続的に施術されてきたことが、この地で革新的な治療法がうみだされてきたとに貢献したといえるでしょう。アーユルヴェーダの発展に貢献したケララ特有のトリートメントには、シロダーラ(注1)、ピリチル(注2)、ナヴァルキリ(注3)、ポディキリ(注4)などがあげられます。

現在では、アーユルヴェーダは、完璧な健康状態をもたらす他に類をみないその可能性から、自主的な治療科学として再生しているだけでなく、身体の健康を追求する無限の積極的な潮流によって世界中で受け入れられて来ています。しかしその一方で、近年アーユルヴェーダは劇的な変化を経ました。最近のアーユルヴェーダの発展は、最も珍重される治療法の一つとしての世界的な評価を得るための進化を強く推進してきました。

地球全体で高まるアーユルヴェーダの人気自体が、世界中の人々にとってアーユルヴェーダをこの上なく興味深い分野として認識させ、ほかならぬそのアーユルヴェーダの概念を発展させていくという結果をよんだのです。アーユルヴェーダ教育は、時代の経過とともに人気が薄れてきていましたが、アーユルヴェーダの教育や研究の解釈に携わる政府系の団体、また民間の団体の呼びかけにより、再び、かなり大きな成長をとげました。現在では、学士や修士、または博士課程を修了した方は、誰もが容易にアーユルヴェーダの業界でキャリアを積むことができます。また、アーユルヴェーダ教育のカリキュラムは、その効果と効用を保存するために、アーユルヴェーダの古代文書に詳しく記載された教育方法どおりにすすめられています。

その治療法の能力と将来性を評価され、アーユルヴェーダはWHO(世界保健機関)により、TRM(伝統医学)として世界的に認識されました。近年の統計データによると、ここ数年アーユルヴェーダの規模はかなりの勢いで拡大しており、昨年は前年度比約20%の成長を見せています。また現在、インドでは約15,000点のアーユルヴェーダや植物性の薬品が手に入ります。さらに、あるデータによるとインドはアーユルヴェーダ生産高約15億USドル相当のうち、約2500万USドル相当を輸出することで、世界第2位のアーユルヴェーダ薬品輸出国となっています。インドにはおよそ20,000前後の大、中小規模のアーユルヴェーダ薬品製造業者が存在しています。

上記に加え、インド政府もまた、アーユルヴェーダの需要の増加を加味し、アーユルヴェーダの大規模な広報や宣伝をすることに多大な意欲を見せています。その第一歩として、中央政府は99億ルピー(約1400万USD)をアーユルヴェーダ医学やそのプロモーションの予算に充て、さらにはアーユルヴェーダ治療普及率の大きな向上を狙い、今後5年間で国内に20の薬用植物加工場を設ける計画を立てています。

アーユルヴェーダは長期にわたって健康問題に苦しむ人々に新たな希望をもたらしました。アーユルヴェーダの治療を受けた後、足が麻痺していた人が歩けるようになったり、不治の病がなおったり、信じられないような出来事が科学の発達した今日でさえ起こるのです。アーユルヴェーダの基本原論は、病気を根本から完璧に治癒することであり、そしてこれによりたくさんの人が完璧な健康状態を保つことへの希望をもたせました。

最近アーユルヴェーダでのトレンドとして脚光を浴びているのが、5段階にわたる毒素排出法です(パンチャカルマ)。不規則な生活習慣と、ジャンクフードの摂取により、私たちの体は想像を絶するほどの毒素に満ちています。パンチャカルマは私たちの心と体のデトックス(毒素排出)を助ける自然治癒法なのです。この7~9日間の行程で、血液と体内の浄化を行います。この5段階はヴァマナ(注5)、ヴィレチャナ(注6)、ナスヤ(注7)、ヴァスティ(注8)、ラクタ モクシャ(注9)に分かれれます。この治療を終えた人の多くは今まででは考えられなかったような世界を体験し、非常に喜ばしい結果を得ています。

もうひとつのトレンドとして、美容、健康、健康状態の維持・増進の観点からアーユルヴェーダの薬用化粧品を通したアンチ・エイジングのスキンケア法が挙げられます。薬用化粧品は局部的な化粧品(肌の上に塗るもの)であり、薬剤の配合には、肌の生物的機能に働きかける構造要素を活性化させることで肌の美しさ、健康さを増加させるはたらきがあります。このように、可視範囲の老化の進行を遅らせたり、若返らせたりするはたらきをもつ局部化粧品は薬用アンチエイジング化粧品と呼ばれています。アーユルヴェーダの薬用化粧品は、安全さとホリスティックな効用から非常に大きな需要があります。アーユルヴェーダの薬用化粧品は、特定の薬用ハーブエキス、果物、エッセンシャルオイルでできているため、副作用無しで安全に使うことができるのです。今日では、肌の調子を整えたり、肌荒れを直したり、保湿効果を高めるなど、肌の若返りを期待した幅広い用途でアーユルヴェーダの薬用化粧品が用いられ、肌の健康な輝きを取り戻すのに十分な効果を発揮しています。

ニュートリコスメティクスは今日のアーユルヴェーダにおけるもうひとつのトレンドとなっています。ニュートリコスメティクスということばは、より高いスキンケア効果を発揮させるため、毎日のスキンケア製品の使用と並行して食べたり飲んだりする製品のことを指します。このように、口から摂取することで、特定の生理現象の進行を促進または抑制し、若々しさを向上させる製品は、大抵は細胞や組織の不可逆性の衰退などの老化に関連づけられます。アーユルヴェーダで使われる数多くのハーブや植物のエキスは若返りに役立つこと、また完全に自然由来の製品である一方で副作用が起こらないという理由から、アーユルヴェーダ製品のなかでもそのようなニュートリコスメティクスの需要は多大にあります。

さらにもうひとつのトレンドは、アーユルヴェーダを利用した関節炎の治療です。関節炎とは、主に高齢者に起こりやすい関節の痛みやコリなどの症状のことをさします。最近では、10人のうち少なくとも1人がこれを発症しています。もっとも一般的な関節炎のタイプには、リウマチ、軟骨の老化衰退による骨関節炎、痛風、若年性関節炎、乾癬性関節炎があります。これらの疾患は、少なくとも一つ以上の関節で起こる痛みやこわばり、腫れなどの症状に特徴づけられます。また、これらの症状に苦しむ人々は緊張感を覚えたり、ふさぎ込んだり、落胆したり、不安感を覚えるようになります。関節炎は、アーユルヴェーダにおける”アマヴァータ”と関連づけられるとされています。”アマ”は毒素、”ヴァータ”は空気という意味を持ちます。アーユルヴェーダでは、関節でおこる炎症は、毒素と空気の蓄積によるもので、それが結果的に激しい痛みとコリを引き起こすのだとされています。アーユルヴェーダにおける関節炎治療法に、アロマセラピーマッサージがあります。このプロセスでは、薬用エッセンシャルオイルを使用したマッサージが行われ、これが蓄積した毒素を取り除く効果があると考えられています。これに加え、治療の一環として、十分な睡眠、体にあった薬を飲むこと、食生活やライフスタイルの見直しなども処方されます。ヨガもまた、関節炎に関係のある症状を軽減させるのに、非常に効果のある治療法のひとつとされています。アーユルヴェーダに基づく治療は、副作用の起こらない、自然な治療法で症状の沈静が続くので、ますます多くの患者の信頼を得ています。

アーユルヴェーダにおけるもうひとつのトレンドとして、皮膚病の治療が挙げられます。

アーユルヴェーダにもとづいた治療により、乾癬、湿疹、蕁麻疹などのさまざまな皮膚のが完全に治癒される可能性があるとされています。また現在、アーユルヴェーダは赤みや吹き出物などの肌のトラブルの治療に役立っています。このようなタイプの症状を、アーユルヴェーダでは食事、ライフスタイルを変えたり、ハーブを体内に取り入れることによって治療します。皮膚病に効果のあるアーユルヴェーダの薬は主に、ニーム、アカネソウ、サンダルウッドなどを含有しています。これに加え、ニームガード、スラクタ、ラクタソダク バティなどのサプリメントや、アムラパウダーなどの調合薬が患者に処方されます。アーユルヴェーダの薬品は、いつか何らかの形で副作用がおこるといわれるアロパシー医学とは異なり、どのような副作用も起こることはありません。

アーユルヴェーダはすでに、医療分野での活路を切り開きました。今や、インドやその他世界中の人々がこのユニークな、時代を経て証明されたアーユルヴェーダの科学を受け入れています。地元や世界中の投資家が、アーユルヴェーダビジネスでの可能性や治療への大きな需要から、真剣に注目してきています。この多大な需要は、ストレスの多い労働環境や、不規則な食生活、ライフスタイルへの無頓着さ、不規則な食生活、ジャンクフードの摂取による毒素の蓄積、安定の追求、不健康な生活環境による体の不調などのさまざまな理由によるものです。現代において、人々は平穏な生活を求めて走り続け、自然にそれをもたらしてくれるサービスにむやみにお金を使っていますが、アーユルヴェーダは全ての人にぴったりの救いの手をさしのべてくれます。

新しいテクノロジーの導入により、アーユルヴェーダに基づいた治療法の人気は何倍にも増え、日常生活におけるアーユルヴェーダの利点に注目を呼ぶようになりました。世界中で花開くアーユルヴェーダのルーツは、このユニークな自然の治癒法をひとびとの生活の一部にしていくでしょう。さらに、健康志向の高い人々は、アーユルヴェーダにおけるトレンドの実践によって元気で美しい体を維持することができるでしょう。

注1:シロダーラ ー薬用オイルを額にそそぐ
注2:ピリチル ー温めた薬用オイルをからだに絞る
注3:ナヴァラキリ ー赤いお米からつくられた塊で全身をマッサージする
注4:ポディキリ ー12種類のさまざまなハーブを混ぜたものを熱くして綿の袋に入れ、マッサージする
注5:ヴァマナ ー治療の一環としての嘔吐
注6:ヴィレチャナ ー体内の余分な毒素を取り除くための浄化
注7:ナスヤ ー鼻からの薬剤投入
注8:ヴァスティ ーハーブエキスと薬用オイルの調合薬の、直腸への投入
注9:ラクタ モクシャ ー人工的に出血させることにより血の浄化をする(ごく稀なケースでしか行わない)

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HAANAでは、インドでアーユルヴェーダを学びたい、体験したいといった方や、ケララ州のことが知りたい、観光してみたいといった方のためにアーユルヴェーダのことはもちろん、ケララ州の魅力をたくさん伝えていきたいと思います。
よろしくお願いします。